――昼休み、大樹の側に寝転がり木漏れ日を眺めていた。 日溜まりで、子供のように戯れ遊びイジィたちの声を遠くに聞いていた。 「……そうやって、距離を取る事でアルは均衡を保とうとするんだね。」 本を片手に、カータが覗き込む。 総て知ってるのは承知の上で、目深に帽子を被り直す。 厭な金色の瞳を隠すように 「アルにチカラが備わってなくても、きっとアルはアルなんだろうね。」 木漏れ日の大樹の下、アルの隣へ座るカータ。 アルは答えない。 アルは答えられない。 ただ 「その鳥肌立つような事を言うのを、止めろ。」 そう、口元に微笑を残すカータに誤魔化し言うだけ。 帽子で狭まった視界に手が伸びてくる。アルは、帽子を押さえる。 「ヒカリが綺麗なんだ。アルが嫌なら見ないから…」 カータの言葉に、帽子をずらす。 キラキラとした木漏れ日。 金色の光が心地良い。 金色の瞳も光を眺める。 ―――この瞳のせいで、視たくないモノを視てきた。きっと、これからも。 相手の心に深く土足で忍び込む行為と感覚は、一生慣れないだろう。 けれど、それで良いのかもしれない。 葛藤と苦悩を抱え生きていくのが、他人の深みへ侵入した罰。 ひとつ、溜息を零す。 ヒカリの下、はしゃぐイジィたちと 木陰にいる俺たち 知り合ったからには、痛めたくない。 「……もし、俺が普通でも、お前はオレの側にいたか?」 カータに視線も向けず、問うてみる。 「難しい質問だな。まず、普通ならこの学院にはいないし。アルにとっての普通の基準は知らないけど、きっと今と変わりない日常だったろうさ。」 本から顔を上げ、しれっとした顔でカータは言い切った。 「つくづく、恥ずかしい事を言うな、まったく……」 帽子で赤らんだ顔を隠す。 「アルが先に、言い出したって自覚してないだろ?」 したり顔のカータの首をアルが絞める。 大樹の下、二人がじゃれあい始めれば、日溜まりで遊んでいた仲間が、駆け寄りじゃれあいに混ざる。 アルの手の中、腕に絡んでくる体温。 大切にしたい空間。 ――守りたい居場所がある限り他人の痛みへ侵入した痛みを、堪えられる。 |